2017年7月に、イランから陸路入国し、イラククルディスタン地域に訪れました。
当時はイラクは内戦状態で、シリア政府軍がイラク西部の都市、モスルの奪還作戦を行っている最中でした。
治安には不安がありましたが、最新の情勢を確認し、現地在住のクルド人から情報を得て、イラク・クルディスタンへの入国を決断しました。
この記事ではイラク・クルディスタン地域における基本旅行情報と、実際に観光してみた感想を述べます。
入国
イランからの陸路入国で、アライバルで30日のビザが取得できます。
ビザ要件が変わったとかで一度イラン側に引き返すよう言われましたが、最終的には入国できました。
入国方法などは別途記事にします。
治安
私が滞在している間、一度たりとも危険を感じる場面はありませんでした。
タクシーに乗って街間を移動する際には多数の検問を通ることになります。
モースル、バグダッドに繋がる道路ですが、クルディスタン地域外へアクセスする際には、イラクのビザが別途必要になります。
スレイマニヤからエルビールに向かう際には、当時爆破テロが多発していた地帯、キルクークを経由するルートを通った際には、街でありながら誰も外を歩いていないなど、少し不穏な雰囲気がありました。
クルディスタンの人々は旅行者にとても親切で、よくありがちなボッタクリやお釣りの誤魔化しなども一切ありませんでした。
渡航される際は十分に情勢を調査し、不安であればカウチサーフィンなど通して現地に住んでいる人達に質問するのもいいかと思います。
食事
食事に関しては隣国のトルコやイランと大きな違いはないような印象を受けました。
ケバブや肉料理が一般的で一番よく見かける食事です。
ユビキタスなケバブサンド
(1000~1500ディナール = 100~150円)
一般的な食堂での食事
(2000~6000ディナール = 200~600円)
小綺麗なレストランでは10000ディナール=1000円のメニューを掲げているところも多いです。
私の大好物であるアラブ菓子、クナーフェも勿論あります。
交通
クルディスタン地域内では都市間を結ぶ公共交通機関が存在しないため、基本的にはシェアタクシーでの移動が基本になります。
タクシー乗り場は”ガレージ”と呼ばれていて、例えばスレイマニヤからエルビールに行きたいときには、”エルビールガレージ”。
ドホークに行きたいときには”ドホークガレージ”に向かうことになります。
タクシードライバーに行き先のガレージ名を告げれば問題なく連れて行ってもらえます。
宿泊
安宿
(15000~20000ディナール = 1500~2000円)
中級宿
(20000~30000ディナール=2000~3000円)
Booking.comなどホテル予約サイトでは大体4000円前後が最安値で件数も少ないですが、実際には多くのホテルやホステルがあります。
格安のホステルを探したければ、予約なしで現地に着いてから探すのも容易です。
その際には、必ず値切りを忘れないようにしましょう。
人々の印象
ドホークでお世話になったおじさんです。
現地人向けの旅行会社で働いていて、街案内やクルディスタンでの生活の話をしてくれました。
「あなたは客人だから私が払うよ。日本に帰ってクルディスタンでの経験をみんなに伝えてくれ。いい国だったって」
食事の会計のとき、そう言って私の支払いの受取を拒みました。
彼はイランに住むクルド人で、一緒にクルディスタンに入国しました。
そのときに付きっきりで国境でのやり取りを助けてくれて、ビザ関連でひと悶着あったときも、もし彼の助けがなければ入国は拒否されていたと思います。
入国後も、食事休憩で立ち寄った食堂で、こちらがお礼しないといけない立場なのに、イラク紙幣を持ってない自分に食事やお茶を奢ってくれました。
クルディスタン人は旅行者にものすごく親切にしてくれます。
クルディスタンの旅のハイライトは間違いなくか”クルディスタン人”になるでしょう。
シーズン
私が滞在したときは夏期で、日中気温は毎日40℃を超えていました。
また、ショッピングモールやカフェなど、エアコンがきいていて休憩できる場所があまりないため、夏期(6~8月)の滞在はかなり辛いものになります。
同じく、ラマダン月の渡航の場合は再検討したほうがいいかと思います。
クルディスタン滞在中にラマダン明けを迎えたためにラマダン中と後の街の雰囲気を体験しましたが、街の活気が全く違います。
ラマダン時
メインストリートなのに人が少ないです。
こちらはエルビールにあるデパート、カルフールですが、90%のお店が閉まっており活気が感じられません。
ラマダン明け
活気づいているバザール。
オープンエリアで食事とシーシャを楽しむ人々。
観光
クルディスタン地域の観光地は限られています。
元々観光資源が少ないのもありますが、治安面での問題や、郊外のアクセスが非常に困難なこともあり、今後の治安改善、発展に期待したいところです。
クルディスタンのランドマークともいえるシタデル
ドホークにあるグランドモスク
公園
フセイン独裁時に使われた処刑場を博物館化したアナスカラ。ですが、こちらは何故か閉まってました。
基本的には、観光地を楽しむ場所ではなく、人との交流や町歩きを楽しむ場所、それがクルディスタンだと思います。
路上やスーパー、どこでも売られている鳥
最後に
これからの発展が望まれるクルディスタン地域。
あちらこちらで建設が行われていて、それは”小さなドバイ”を思わせるようでした。
まだ治安面での不安がありますので、観光地として市民権を得られるには多大な時間が必要だとは思われますが、クルディスタン人のホスピタリティから、観光地として大きなポテンシャルがあることを思わせてくれます。
ですが、現状は残念ながら情報も非常に限られていて、旅行が難しい状態であるのも確かです。
観光する際には、是非ともガイドブックを熟読することをおすすめします。
こちらの記事では、政治面の言及は一切無しで、一観光客としてクルディスタンはどういう場所だったのか、ということをお伝えしました。
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